語り部の夜「鉄砲ぶち」のはなし

寒さが厳しくなってきましたね。

去る12月8日(月)、かじかの里学園「語り部の夜」に、上野村の先輩をお呼びしました。

お話をしていただく方は、黒澤一歩(かずほ)さん、内容は「鉄砲ぶち」のはなし。

鉄砲ぶちとは、上野村の言い方で、銃を使った「狩猟」のこと、その猟師のことを指します。

豊かな自然環境が残る上野村では、今でも数多くの人が鉄砲ぶちを行っています。

黒澤さんはおじいさまの代から、3代にわたり鉄砲ぶちで、現在でも80代のお父様と一緒に猟に出かけています。

現在の上野村では限りなく唯一に近い存在となってしまった、家族経営の専業農家であり、上野村特産のプラム、

シイタケ、マイタケ、ムキタケ、ヒラタケ、キクラゲなどのキノコ類、

切り花の菊、干し柿などなど季節を通して農産物の生産と販売を行い、冬場の生業としても

狩猟「鉄砲ぶち」があります。

 

今回の開催においては、昨今の一般メディア上で連日報道される、国内のいたるところ(都市部でも)でのクマの出没と、死傷を含めた人的被害などニュースに触れる状況で、国民みんなの興味が高まった話題でもあり、子供も大人も興味深い時間になったと思います。

黒澤さんのライフストーリーの中で、オーストラリアの大規模農家での修行の話があり、農作業外での活動として、「ハンティングをやってみるか」と農場主に言われ、当地の農場が悩まされていた深刻な獣害をもたらす”ウサギ”を沢山捕獲した話と、活動中に地下足袋を履いたために、その足跡を見た現地の人たちが「つま先が二つに割れた新種の大型動物が農場に現れた!」と騒ぎ始め、研修先を混乱させた話で、つかみはOK!でした。

 

黒澤さんが鉄砲ぶちを始めたころから、現在までの狩猟を取り巻く環境の変化。実は、おじいさんが狩猟をしていたころは、シカ、イノシシ、クマなどの大型の獣はほとんどとれず、一年に一頭も獲れないことや、イノシシが獲れた現場を実際に見たくて、当時の人が山梨まで出かけた話などもありました。特にシカがここ10年ほどで急激に捕獲数が増え、ここ数年でその数は年間で200頭を超えることも。

 

黒澤さんが初めてクマを仕留めた時の話。クマが入っていそうな洞穴や、木の根っこの下や洞などを見て回り、そこにいるクマを撃つという「アナグマ」という猟法。クマと顔を突き合わせるほどの距離で、後ろに転がされたり仕留めたり。クマと対峙した時の独特の緊張感などを、 まさに手に汗握る臨場感で話してくださり園生たちもお話の中に引き込まれます。

園生からの質問も絶えません。

Q.「この辺でもやっぱりクマは出ますか。学園の周りでもでますか?」というタイムリーな質問はやはり。

怖がらせるわけではありませんが、答えはやっぱり「出る可能性あり」。ただ正確に言うと、上野村はだいたいここ10年くらいは、一年に数回は、いつもあるということ。ただ特殊な例としては、山奥、谷の最奥の集落に、一世帯だけ残った高齢者のお宅には、夜にクマが台所にまで侵入された話も。

 

「死にかけたことはありますか?」という質問がありがありました。それ、すでに話していただいたクマを仕留めた時の話の数々、その全てが紙一重でしたよ・・・。それでもさらに、出てくる出てくる。イノシシの突進を受けて、崖の上の木の上に飛びついて逃げたというエピソードがありました。木の上に飛びついたとはいえ、その時、膝にタックルされたそうです。そのイノシシがメスだったことだけが幸運で、オスの牙で突撃されていたら、もうその足は使えない状態であったであろうと...

 

「黒澤さんにとって鉄砲ぶちとは?」というノリで投げかけた質問でしたが、「生活の一部だから、よくわからない」の答え。その中に、重さを感じました。生活の一部。農家でもある黒澤さんからすれば、冬場の狩猟はそれ以外の季節において自分の生業の農産物を守ることでもあります。また狩猟が禁止されている冬以外においても、住民からの害獣駆除要請があれば撃ちに行かなくてはならないのです。

 

本当に狩猟をやっている人から、リアルな現場の話を聞く体験は、やっぱり凄い。ここ、かじかの里学園ならではの体験かなと思います。

 

昨今の野生動物にかかわる報道に触れ、自然環境と人間の暮らしの関係を本気で考えないといけない時がきていると思います。今回は狩猟をする人側のお話を聞く機会でしたが、多様な異なるな立場からの視点や、考え方を知って、感じていることで、より良い議論ができたり、アイディアを生み出せると思います。これをきっかけに、園生の皆さんが、未来を考えるきっかけになればよいなと思いました。

 

動画サイト等のメディアからの、即席で快感を得られる情報にさらされている今だからこそ、人同士がリアルに会い、自分の言葉で情報を伝えるという技を学んでほしくて、村のエピソードトークの達人をお招きしました。

 

そして、なんでも自分でやってやろう!なんでもリアルで体験してやろう!という気持ちを持って、どんなことにも挑戦する、そんな魂に火が付くきっかけになればと願います。

 

黒澤一歩さん、ありがとうございました。

つね